【立会外分売は買いか?】スクロール(8005)

小売業

こんにちは!

直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、分売で買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから小売業種のスクロールです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
  • 立会外分売の魅力
    • 前日終値より安く購入可能
      • 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。
        (ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
    • 買付手数料はかからない
      • 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
    • 即日売却OK
      • 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
  • デメリット:抽選で外れることもある
    • 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。

立会外分売の概要

まとめ

実施日や株数は以下です。販売価格は、会社側から実施日前日に発表があります。

分売数量は決まっていて、100株単位で最大5,700株まで購入できます。

2/13(木)の夕刻に、会社側からの適時開示で分売値段のお知らせがあります。このブログでも追記しますので、チェックしてくださいね💖

分売予定日2025 年2月 14 日(金)
分売数量1,261,900
(発行済み株式総数 35,098,550
株の約3.59%
分売値段(決定後記載
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
申込上限数量5,700
表1:スクロール(8005) 立会外分売概要

【立会外分売実施の目的】

  • 同社株式の分布状況の改善及び流動性の向上を図るため

としています。

今回の分売数量は、発行済み株式総数の約3.59%多い数量(※1)です。

※1:一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ない、としています。

また、この銘柄の流動性は、直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は2,263百株、25日平均は1,161百株(2/10時点)で、流動性は平均的な水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています)

そして、今回の分売数量(12,619百株)は、1日の出来高(25日平均:1,161百株)の約11倍で、この銘柄の平均的な出来高からすると分売数量は多めといえます。

どんな会社?

Eコマース

社会から信頼される企業であること。清く、正しく、美しく、事業を行うこと。」を社是とし、

創業以来、安心と信頼に基づいた商品・サービスを提供するとともに、通信販売企業のパイオニアとして、業界の発展に寄与してきた会社です。

事業内容は主に、EC・通販事業者へのソリューション事業及びアパレル、雑貨、化粧品・健康食品、旅行等の通信販売事業を行っています。

事業セグメントは、「ソリューション事業」「通販事業」「eコマース事業」「HBT事業」「グループ管轄事業」の5つ(2025年3月期からは「HBT事業」を「eコマース事業」に統合し、4つの事業)があり、それぞれ、

  • ソリューション事業
    通信販売事業者及びEC事業者向け通信販売代行事業
  • 通販事業
    通信販売事業(主な商材:アパレル、インナー、雑貨等)
  • eコマース事業
    個人向けeコマース事業
    (主な商材:ブランド服飾雑貨、アウトドア用品、ナショナルブランド化粧品、雑貨、防災用品等)
  • HBT事業
    オリジナルブランド化粧品・健康食品等販売事業旅行の企画・販売事業
  • グループ管轄事業
    同社グループ及びソリューション事業の物流事業、不動産賃貸事業、海外子会社の管理

を行っています。

2024年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • ソリューション事業 29.1%
  • 通販事業 49.1%
  • eコマース事業 19.8%
  • HBT事業 1.9%
  • グループ管轄事業 0.0%

となっており、「通販事業」が5割を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2025年3月期3Q(2024年4月~12月)の経営成績】

(2025年1月31日発表:日本基準(連結))

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2024年3月期
3Q累計
608
(△1.6)
4,934
(△5.5)
5,094
(△1.8)
3,459
(△2.8)
2025年3月期
3Q累計
628
(3.4)
5,224
(10.3)
5,734
(12.6)
3,885
(12.3)
2025年3月期
通期会社予想
(2025年1月31日
修正)
840
(5.2)
6,200
(16.7)
6,500
(17.9)
4,400
(20.6)
通期予想に対する
3Qの進捗率[%]
74.887.788.288.2
表2:スクロール 2025年3月期3Q経営成績と2025年3月期通期予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は微増利益面は1割強増でした。

今期(2023年3月期)通期の業績予想は、今3Q決算発表と同時に上方修正(表4参照)しており、前期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は2割前後の増益を見込んでいます。

通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で、売上高は7割強でそこそこ利益面は9割弱で順調です。

【2025年3月期3Qの状況、経営成績の要因】

小売業界は、実質賃金のプラス基調は定着しておらず、物価高騰に伴う生活防衛意識の高まりにより消費マインドの低下が懸念されていることに加えて、

仕入価格やエネルギー価格等の各種コストが増加しており、厳しい経営環境となっています。

通販業界は、成長率が鈍化しているなか、参入企業の増加に伴う業種・業態を越えた競争が激化しています。

このような環境のなか、同社グループは、2024年度から始まる新たな中期経営計画「Marketing Solution 2026 DMSCからMSCへ」を策定しました。

本中期経営計画のもと、マーケットの拡大に挑戦し提供価値を高めていくことで、既存の殻を破り、新たな企業体へ進化することを目指しています。

2024年度は、「成長軌道への回帰事業ポートフォリオの修正」及び「実効性のあるResponsibility経営の推進」の二大重点方針に取り組むことで、同社グループの企業価値の向上に努めており、

当3Q連結累計期間の経営成績は、売上高ソリューション事業の成長利益面ではeコマース事業再編効果により、表2の数値の前年同期比 増収増益となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

前連結会計年度まで、5つの報告セグメントにて事業を展開していましたが、1Q連結会計期間より、経営の効率化を図るため、

従来の「HBT事業」を「eコマース事業」に統合し、4つの報告セグメントへと変更しています。

以下の前年同四半期比較は、前年同四半期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。

主力の「通販事業」前年同期比 減収増益

「ソリューション事業」増収減益

「eコマース事業」減収黒字転落

「グループ統括事業」増収増益となっています。

セグメント売上高
[億円]
(前年同期比
増減率
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同)
ソリューション225
(23.7)
776
(△5.9)
通販305
(△0.3)
4,745
(0.9)
eコマース108
(△18.6)
54
(黒字
転換
)
グループ管轄27.0
(8.1)
162
(61.2)
表3:2025年3月期3Q セグメント別業績

各セグメントの状況は以下です。

ソリューション事業

通販ソリューションメニューのワンストップ提供企業として、主にEC・通販事業者のサポートを行っていますが、

サービスの提供先をEC・通販事業者に限定せずあらゆる事業者を対象にマーケットの拡大に取り組んでいます。

物流代行は、BtoB物流や食品ECなどの新しい市場の開拓を含め、新規顧客の獲得に向けた営業活動や、物流センターの効率改善等に取り組みました。

マーケティングサポートは、引き続き好調に推移しております。

決済代行は、役務提供企業へのサービス展開拡大により、取扱高は堅調に推移していますが、サービス提供先の拡大に伴い、一時的に引当金の負担が増加しています。

なお、多言語同時通訳を強みとしたコールセンター事業を営む株式会社ビーボーンの株式取得に伴う費用を計上しています。

通販事業

夏・盛夏物商品の受注は堅調に推移しましたが、暖冬の影響により冬物商品の受注が例年に比べて遅い立ち上がりとなりました。

また、円安等により仕入価格が上昇したものの、販促費をはじめとする各種コストの削減・抑制に取り組むなど、利益の最適化に努めました。

eコマース事業

事業効率化を目的とした事業再編に伴う不採算商材からの撤退規模縮小により、売上高が大幅に減少しました。

また、再編により運営費用を圧縮したことに加えて、販促費等のコストを削減しました。

グループ管轄事業

自社保有物流施設等の不動産賃貸、同社グループの物流オペレーション及び海外子会社の管理を行っています。

物流オペレーションは、東海・関西・関東エリアにおけるセンター運営の強化を進め、安定的な運営体制の構築に努めました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2025年3月期3Q末時点で65.1%と前期末(62.7%)から2.4ポイント増加しました。

主な負債と純資産の、前期末比の増減は以下となっています。(単位:百万円)

  • 負債 △642
    • 流動負債 △717
      (内訳)未払金 +1,596その他流動負債 +760短期借入金 △3,000
    • 固定負債 +74
      (内訳)引当金 +65
  • 純資産 +2,558
    • 株主資本 +2,623
      (内訳)利益剰余金 +2,446自己株式 +164(自己株式数は減少)

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2025年3月期)通期業績予想の修正】

今3Q決算発表と同時に、2025年3月期通期の業績予想売上高利益面ともに微増の増額修正をしています。

2025年3月期通期の業績予想は表4です。

売上高
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期純利益

[円]
1株当たり
年間配当金

[円]
前回(2024/5/8)
発表予想
8006,0006,2004,200122.6348
今回修正予想8406,2006,5004,400128.0151.5
増減額402003002003.5
増減率[%]5.03.34.84.87.2
表4:スクロース 2025年3月期通期業績予想数値の修正(2025年1月31日発表)

修正の理由は、

  • 売上高想定より上回って推移していることに加え、
    カタログ配布効率の改善など販促費のコントロールに取り組んだことにより、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも前回予想を上回る見込みとなった。

としています。

なお、配当予想に関しても、同社は、株主への利益還元を経営の最重要政策として位置付け、株主資本配当率(DOE)4%を下限とし、連結配当性向 40%を目処として実施することを基本目標としており、

今回の業績予想の修正を勘案し、1株当たりの期末配当金の予想額を 27円 50 銭に修正し、

これにより、1株当たりの年間配当予想は、期末配当と合わせ 51 円 50 銭従来予想から3.5円増配)となりました。

株価指標と動向

株価指標

【2025/2/10(月)終値時点の数値】

  • 株価:1,038円
  • 時価総額:364億円
  • PER(株価収益率(今期予想)):8.44倍

PERは、同業で時価総額が近い、千趣会(8165) 0倍、ベルーナ(9997) 10.3倍、フェリシモ(3396) 25.0倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.01倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):7.39倍
  • 年間配当金(予想):51.5円(年2回 9月 24円、3月 27.5円)、利回り:4.96%(配当性向 40.2%)

配当利回り4.96%で、東証プライムの単純平均2.52%(2/10時点) と比較すると高い水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり10~64.5円で推移しています。

配当性向は、40%~50%で安定しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2020年3月期1049.1
2021年3月期6040.1
2022年3月期64.540.3
2023年3月期4840.2
2024年3月期4240.0
表5:スクロール 年間配当金推移

この会社は、

株主への利益還元を経営の最重要政策として位置付け、株主資本配当率(DOE)4%を下限とし、連結配当性向40%を目処として実施することを基本目標としています。

また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本的な方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、同社グループの商品を購入する際に割引として利用可能な株主優待ポイントが、以下の内容で進呈されます。

長期保有の場合、「①通常株主優待」に「②長期保有株主優待」のポイントが加算されます。

出所:スクロースIRページより

100株保有で1年未満継続保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)で、利回りは5.92%となります。

個人投資家にとってはうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2023年後半から、900~1,100円のレンジ内で推移していましたが、

2025年2月にこのレンジを抜けて高値(1,135円)をつけています。

<日足チャート(直近3か月間)>

2/4に年初来高値(1,135円)をつけるまでは、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移しましたが、その後は調整しており、

今回の立会外分売発表の翌営業日(2/7)は、分売による短期的な需給悪化を懸念され、窓を開けて出来高を伴い、前日比 54円安(-4.94%)と急落しました。

この下落で、75日移動平均線(青線)を割り込んでいます

今後は、昨年12月の安値(1,018円)を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

  • 今期(2025年3月期)3Qの業績は、売上高ソリューション事業の成長利益面ではeコマース事業再編効果により、
    前年同期比 増収増益で、売上高は微増利益面は1割強増
  • 今期通期予想は、今3Q決算発表と同時に、売上高想定より上回って推移していることに加え、
    カタログ配布効率の改善など販促費のコントロールに取り組んだことにより、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも前回予想を上回る見込みとなったため上方修正しており、
    前期比 増収増益で、売上高は1割弱増利益面は2割前後の増益を見込む。
  • その通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で、売上高は7割強でそこそこ利益面は9割弱で順調

【株主還元】

  • 配当利回り(会社予想)は4.96%(2/10時点) で、東証プライムの単純平均 2.52%と比較すると高い水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株あたり10~64.5円で推移しており、
    配当性向40%~50%で安定
  • 会社の還元方針は、株主への利益還元を経営の最重要政策として位置付け、株主資本配当率(DOE)4%を下限とし、連結配当性向40%を目処として実施することを基本目標としている。
  • 株主優待があり、毎年3月末に100株以上保有の株主は、同社グループの商品を購入する際に割引として利用可能な株主優待ポイントが、株数に応じて進呈される(長期保有制度あり)。
    100株保有で1年未満継続保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)で、利回りは5.92%となる。

【流動性・分売数量】

  • 直近の出来高の5日平均は2,263百株、25日平均は1,161百株(2/10時点)で、流動性は平均的な水準
  • 分売数量は、発行済み株式総数の3.59%多い数量で、
    この銘柄の1日の平均的な出来高の約11倍であり、それからしても多めの数量

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2023年後半から、900~1,100円のレンジ内で推移していたが、
    2025年2月にこのレンジを抜けて高値(1,135円)をつけている。
  • 直近の株価は、2/4に年初来高値(1,135円)をつけるまでは、高値切り上げ安値切り上げの上昇基調で推移したが、その後は調整しており、
    今回の立会外分売発表の翌営業日(2/7)は、分売による短期的な需給悪化を懸念され、窓を開けて出来高を伴い、前日比 54円安(-4.94%)と急落しました。
    この下落で、75日移動平均線を割り込んでいる
  • 今後の株価は、昨年12月の安値(1,018円)を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐
分売数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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