【公募増資・売出(PO)は買いか?】京都フィナンシャルグループ(5844)

公募増資・売出(PO)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから銀行業種の京都フィナンシャルグループです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

まとめ

今回のPOは、大株主(東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、三井住友信託銀行、あいおいニッセイ同和損保)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は大和証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、2/18(火)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2025 年2月 18 日(火)から 21 日(金)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
株式の売出し
引受人の買取引受による売出し
数量
普通株式 17,958,700
発行済み株式総数 301,362,752  の約5.95%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 2,693,800 (上限の数量)
大和証券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事大和証券
表1:京都フィナンシャルグループ(5844) PO概要

【株式売出しの目的】

  • 同社は、「第1次中期経営計画」の前倒し達成により新たに策定した戦略目標において、ベンチャー投資を中心とする成長投資の原資として、同社の保有する政策保有株式の更なる縮減計画を掲げている。
  • また、本邦企業においても、コーポレートガバナンス強化の観点から、政策保有株式を見直す動きが進んでいる。
  • このような状況の中、一部の同社株主より同社株式を売却したい旨の意向を確認した。
    これを受け、最適な株式売却の手法を検討した結果、同社株式の円滑な売却機会を提供し、幅広い投資家の方々に同社株式を保有してもらうことで、株主層の拡大、多様化及び流動性を高め、企業価値の向上を目指すべく、株式売出しの実施を決議した。

としています。

また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約6.85%(OAを含む)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、日産東京販売HD 10.4%、アズワン 4.88%、丹青社 7.21%でしたので、それらと比較すると中間的な数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株数)の5日平均は14,179百株、25日平均は9,002百株(2/7時点)で、流動性は高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

【自己株式取得】

昨年11月に自己株式の取得を発表しており、今回のPOによる需給悪化の緩和につながる可能性があります。

内容は表2となっています。

取得期間2024 年11月15日 ~ 2025年6月30日
取得株式の総数普通株式 500 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:1.71%
取得金額の総額100 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり2,000 円換算
取得方法東京証券取引所における市場買付
表2:京都FG(5844) 自社株買い概要

(自己株式の取得の変更を行う理由)

  • 同社の株主還元方針に基づく株主還元強化ならびに資本効率の向上を通じ企業価値の向上を図るため

としています。

2025年1月末時点でこの自社株買いで取得した株数はまだ0株ですので、

今回の株式の売出数量最大約2,065万株)に対し、そのうちの最大約2割強を市場で買い入れて一時的な需給悪化の緩和を図っているといえます。

どんな会社?

1941年(昭和16年)に京都銀行として創立

2023年10月に持株会社体制へ移行し、「京都フィナンシャルグループ」として新たな一歩を踏み出した、京都が地盤の金融サービス会社です。

事業内容は、銀行業務を中心に、リース業務クレジットカード業務証券業務等の金融サービスに係る事業を主として行っています。

2024年3月期通期のサービス別経常収益(※1)構成比は、

  • 貸出業務 40.1%
  • 有価証券投資業務 31.6%
  • その他 28.3%

となっており、「貸出業務」が最も多く4割を占めています。

※1:経常収益

企業の事業として営んでいるものの売上と、余剰資産の運用で得た利息など営業外で得た収入を合わせた金額

直近の経営概況

経営状況

【2025年3月期3Q(2024年4月~12月)の経営成績】

(2025年1月31日発表:日本基準(連結))

決算期経常収益
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主
に帰属する
当期純利益

[億円]
(同)
2024年3月期
3Q累計 ※2
1,090
(ー)
429
(ー)
315
(ー)
2025年3月期
3Q累計
1,292
(18.5)
453
(5.6)
324
(2.6)
2025年3月期
通期会社予想
(2024年11月14日
修正)
1,616
(17.3)
495
(13.5)
350
(10.8)
通期予想に対する
3Qの進捗率[%]
79.991.692.6
表3:京都FG 2025年3月期3Q経営成績と通期会社予想
※2:同社は2023年10月2日に持ち株会社に移行したため、前年同四半期の対前年同四半期増減率は記載なし。

表3の通り、前年同期比 増収増益で、経常収益は2割弱増利益面は微増~1割弱でした。

今期(2025年3月期)通期の業績予想は、今2Q決算発表と同時に上方修正(表4参照)しており、

前期比 増収増益で、経常収益2割弱増利益面は1割強増を見込んでいます。

その通期予想に対する進捗率は3Q終了時点で、経常収益8割でそこそこ利益面は9割を超えており順調です。

【2025年3月期3Qの状況、経営成績の要因】

経常収益貸出金利息有価証券利息配当金を中心とした資金運用収益の増加などにより、前年同期比202億円増加1,292億円となりました。

また、経常費用は、預金金利の引き上げなどに伴う資金調達費用の増加などにより、同178億円増加838億円となりました。

この結果、経常利益同24.1億円増加453億円親会社株主に帰属する四半期純利益同8.4億円増加324億円となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>((期末純資産の部合計-期末新株予約権-期末非支配株主持分)期末資産の部の合計×100)

2025年3月期3Q末時点で9.3%と前期末(9.8%)から0.5ポイント低下しています。

負債及び純資産の、主な前期末比の増減は以下となっています。(単位:億円)

  • 負債  +3,108
    (内訳)債券貸借取引受入担保金 +1,453借用金 +2,316譲渡性預金 △645
  • 純資産 △346
    • 株主資本 +134
      (内訳)利益剰余金 +134
    • その他の包括利益累計額 △482
      (内訳)その他有価証券評価差額金 △489

銀行業の自己資本比率の目安として、国際統一基準では、バーゼル合意に基づき、達成すべき自己資本比率を8%以上としていますので、それに対してはやや高い水準です。

ご参考までに、競合他社の以下の銀行の2025年3月期3Q末時点の自己資本比率は、

  • 八十二銀行(8359) 7.4%
  • 滋賀銀行(8366) 6.3%
  • 南都銀行(8367) 4.2%

となっており、それらと比較すると高い水準になっています。

【今期(2025年3月期)通期業績予想の修正】

今2Q決算発表と同時に、2025年3月期通期の業績予想上方修正しています。

2025年3月期通期の業績予想は表4です。

経常
収益
[億円]
経常
利益
[億円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[億円]
1株当たり
当期純利益

[円]
前回(2024/5/14)
発表予想
1,524462330112.95
今回修正予想1,616495350119.78
増減額9203320
増減率[%]6.07.16.0
表4:京都FG 2025年3月期通期業績予想数値の修正(2024年11月14日発表)

前回予想と比べ、経常収益、利益面ともに1割弱の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 主に子会社である株式会社京都銀行において、貸出金利息を中心資金運用収益が当初の予想を上回る見込みであることに加え、
    経費や与信関連費用が当初の予想を下回る見込みであるため、前回公表予想を上方修正するもの

としています。

配当予想に関しては修正はありませんでした。

また、今3Q決算発表時は、連結業績予想に変更はありませんでした。

株価指標と動向

株価指標

【2025/2/7(金)終値時点の数値】

  • 株価:2,154.5円
  • 時価総額:6,492億円
  • PER(株価収益率(予想)):17.9倍

PERは、同業で時価総額が近い、八十二銀行(8359) 11.1倍、滋賀銀行(8366) 13.1倍、南都銀行(8367) 8.2倍と比較すると、高い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.13倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):1.09倍
  • 年間配当金(1株当たり予想):60円(年2回 9月 30円、3月 30円)、利回り:2.78%(配当性向 50.0%)

配当利回り2.78%で、東証プライムの単純平均 2.51%(2/7時点)と比較するとやや高い水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、年間1株当たり15~55円(2023年3月期以前は前身の京都銀行の配当金)で推移しており、2022年3月期以降は連続増配を継続中です。

配当性向は、20%台~50%台です。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]※3
配当性向
[%]
2020年3月期1522.2
2021年3月期1526.9
2022年3月期2536.6
2023年3月期3538.5
2024年3月期5551.6
表5:京都FG 年間配当金推移
※3:2023年3月期以前は前身の京都銀行の配当金

この会社は、

利益配分は、経営の最重要課題の一つと考え、株主還元の充実を進めています。

具体的には、現中期経営計画(2023 年 10 月~2026 年 3 月)においては、純資産ベースROE3%(株主資本ベースROE6%)自己資本比率11%台という目標を掲げたうえで、

株主還元方針を「総還元性向50%以上とし、弾力的に株主還元を実施していく方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年3月末の年1回500株以上保有の株主は、以下のもの1点を選んで進呈されます。

  • 自社グループのオンラインショップ「ことよりモール」で利用可能な優待(4,000ポイント(4,000円相当))
  • ことよりモール取扱商品4,000円相当
  • 社会貢献活動への寄付4,000円相当

また、長期保有優遇制度があり、3年以上継続保有(500株以上)の場合は、上記金額に2,000円相当プラスして進呈されます。

500株を3年未満保有の場合、配当金+株主優待(4,000円相当)の利回りは3.15%となります。

少しハードルが高いですが、個人投資家にとってうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2024年7月に高値(2,962.5円)をつけるまでは、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移しましたが、

その後は調整しており、2,100~2,400円程度のレンジ内での推移が継続しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

昨年11月に高値(2,436円)をつけた後は、しばらく2,200~2,400円のレンジ内での推移が続きましたが、

今3Qの決算発表の翌営業日(2/3)は、決算内容が好感されず、窓を開けて出来高を伴い前日比 180円安(-7.67%)と急落しました。

そして、その2営業日後に直近の安値(2,142.5円)をつけています。

今後は、POの発表を受けて、POによる短期的な需給悪化懸念株価は軟調な展開が予想されますが、

昨年9月につけた安値(2,063円)8月につけた年初来安値(1985.5円)を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索を継続するのか、要注目です。

まとめ

【業績】

  • 今期(2025年3月期)3Qの業績は、貸出金利息有価証券利息配当金を中心とした資金運用収益の増加、費用面は資金調達費用の増加などにより、
    前年同期比 増収増益で、経常収益は2割弱増利益面は微増~1割弱増
  • 今期業績予想は、今2Q決算発表と同時に、京都銀行において、貸出金利息を中心資金運用収益が当初の予想を上回る見込みであることに加え、
    経費や与信関連費用が当初の予想を下回る見込みであるため、経常収益、利益面ともに1割弱の上方修正をしており、
    前期比 増収増益で、経常収益は2割弱増利益面は1割強増
  • その通期予想に対する進捗率は3Q終了時点で、経常収益8割でそこそこ利益面は9割を超えており順調

【株主還元】

  • 配当利回り(予想)は2.78%(2/7時点)で、東証プライムの単純平均 2.51%(2/7時点)と比較するとやや高い水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株あたり15~55(2023年3月期以前は前身の京都銀行の配当金)で推移しており、2022年3月期以降は連続増配を継続中
    配当性向は、20%台~50%台
  • 会社の株主還元方針は、現中期経営計画(2023 年 10 月~2026 年 3 月)においては、純資産ベースROE3%(株主資本ベースROE6%)自己資本比率11%台という目標を掲げたうえで、株主還元方針を「総還元性向50%以上とし、弾力的に株主還元を実施していく方針。
  • 昨年11月に自社株買いを行うことを発表。
    この自社株買いにより、今回の株式の売出数量最大約2,065万株)に対し、そのうちの最大約2割強を市場で買い入れて一時的な需給悪化の緩和を図っている。
  • 株主優待があり、毎年3月末の年1回500株以上保有の株主は、自社グループのオンラインショップ「ことよりモール」で利用可能な優待券や商品(4,000円相当)が進呈される。
    また、長期保有優遇制度があり、3年以上継続保有(500株以上)の場合は、上記金額の2,000円相当プラスとなる。
    500株を3年未満保有の場合、配当金+株主優待(4,000円相当)利回りは3.15%となる。

【流動性・新株式の発行株数】

  • 今回の株式の売出数量(OA含む)は、発行済み株式総数の最大6.85%で、
    直近の株式の売出を含むPOの売出株数比率(OAを含む)(日産東京販売HD、アズワン、丹青社)と比較すると中間的な数量
  • 直近の出来高5日平均は14,179百株、25日平均は9,002百株(2/7時点)で、流動性は高い水準

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2024年7月に高値(2,962.5円)をつけるまでは、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移したが、
    その後は調整しており、2,100~2,400円程度のレンジ内での推移が継続している。
  • 直近の株価は、昨年11月に高値(2,436円)をつけた後は、しばらく2,200~2,400円のレンジ内での推移が続いたが、
    今3Qの決算発表の翌営業日(2/3)は、決算内容が好感されず、窓を開けて出来高を伴い前日比 180円安(-7.67%)と急落した。
    そして、その2営業日後に直近の安値(2,142.5円)をつけている。
  • 今後の株価は、POの発表を受けて、POによる短期的な需給悪化懸念株価は軟調な展開が予想されるが、
    昨年9月につけた安値(2,063円)8月につけた年初来安値(1985.5円)を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索を継続するのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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