【公募増資・売出(PO)は買いか?】日産東京販売ホールディングス(8291)

公募増資・売出(PO)

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証スタンダードから小売業種の日産東京販売ホールディングスです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

まとめ

今回のPOは、大株主(損害保険ジャパン東京海上日動火災保険三井住友海上火災保険)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回はみずほ証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、12/18(水)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2024年12月18日(水)から20日(金)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
株式の売出し
引受人の買取引受による売出し
数量
普通株式 12,094,800 株
(12/6(金)変更 6,066,200 株)
発行済み株式総数 66,635,063 株 の約9.10%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 1,814,200 株
(12/6(金)変更 909,900 株)(上限の数量)
みずほ証券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事みずほ証券
表1:日産東京販売ホールディングス(8291) PO概要

【株式売出しの目的】

  • 同社は、「モビリティの進化を加速させ、新しい時代を切りひらく 笑顔あふれる未来のために、わたしたちは走り続ける」を企業理念に掲げ、地域に根差したモビリティカンパニーとして、顧客のカーライフを支え続けている。
  • 「電動化リーダー」、「安全・運転支援技術」、「モビリティ事業」の3つの成長戦略のもと、EV販売のフロントランナーとして独自の付加価値創出に挑み、持続的な事業成長及び持続可能な社会の実現を目指している。
  • 株式市場においては、政策保有株式見直しの動きが進む中、株主との協議を踏まえ、コーポレートガバナンスをさらに強固なものとすべく、本売出しを実施することとした。
  • また、個人投資家層を中心に本売出しを実施することにより、株主層の多様化及び市場流動性の向上を図ることに加え、同社の認知度向上により事業面における顧客基盤の拡大を期待している。

としています。

また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約10.4%(OAを含む:12/6(金)株数変更)で、

直近の株式の売出を含むPOの売出株数比率(OAを含む)は、GENOVA 15.2%、東テク 7.52%、マックス 3.02%でしたので、それらと比較すると中間的な数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株数)の5日平均は5,364百株、25日平均は1,862百株(12/5時点)で、流動性は高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

【自己株式取得】

今回のPOと同時に、自己株式の取得を合わせて発表しています。

内容は表2となっています。

取得期間2024 年12月6日(金)から 同年12月17日(火)まで
→12/6(金)実施済み
取得株式の総数普通株式 700 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:10.51%
取得金額の総額50 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり714 円換算
取得方法東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付け
表2:日産東京販売ホールディングス(8291) 自社株買い概要

(自己株式の取得の変更を行う理由)

  • 資本効率の向上を図るとともに、将来の経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能とするため
  • 今回の株式売出しの株式需給への影響を緩和するため

としています。

この自社株買いにより、今回の株式の売出数量最大約1,390万株)に対し、そのうちの最大約5割を市場で買い入れて一時的な需給悪化の緩和を図っているといえます。

どんな会社?

1942年の創業以来、地域に根差したモビリティカンパニーとして、常に進化を続けながら、顧客のカーライフを支え続けてきた会社です。

新車販売はもちろんのこと、購入時に提案するオプション部品や保険といった周辺商品、定期的な整備をはじめとしたアフターサービスと、カーライフをサポートする事業をトータルで展開。

また、買い替え時に下取車として入庫した車両を中古車として再販するなど、1台の車両からさまざまな形で価値を提供。

クルマのライフタイムバリューを最大化する「カーライフのワンストップサービス」が特長です。

その他にも、車両の物流やタクシー事業など、自動車の販売にとどまらないさまざまな事業を展開しています。

同社グループは、自動車関連事業を中心とした包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しており、

各連結子会社を基礎とした商品・サービス別の事業区分に従い、「自動車関連事業」、「情報システム関連事業」の2つのセグメント(今期(2025年3月期)は「自動車関連事業」の単一セグメント)があり、それぞれ、

  • 自動車関連事業
    自動車(新車・中古車)の販売及び整備、車検等の事業
  • 情報システム関連事業
    コンピュータのハードウェア、ソフトウェアの販売及びデータセンター等のマネージドサービス事業

を行っています。

2024年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • 自動車関連事業 97.3%
    (内訳)
    • 新車 56.5%
    • 中古車 14.5%
    • 整備 20.7%
    • その他 5.6%
  • 情報システム関連事業 2.4%
  • その他(不動産事業) 0.3%

となっており、「自動車関連事業」が大半ですが、なかでも「新車」の販売が6割弱を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2025年3月期2Q(2024年4月~9月)の経営成績】

(2024年11月13日発表:日本基準(連結))

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主
に帰属する
当期純利益

[百万円]
(同)
2024年3月期
2Q累計
743
(11.5)
4,393
(42.2)
4,170
(39.0)
2,443
(32.5)
2025年3月期
2Q累計
700
(5.8)
3,796
(△13.6)
3,768
(△9.6)
2,485
(1.7)
2025年3月期
通期会社予想
1,500
(0.7)
7,500
(△13.9)
7,000
(△16.3)
4,500
(△38.7)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
46.650.653.855.2
表3:日産東京販売ホールディングス 2025年3月期2Q経営成績と通期会社予想

表3の通り、前年同期比 減収減益で、売上高は1割弱減、利益面は営業利益と経常利益は1割前後の減益ですが、純利益は微増でした。

今期(2025年3月期)通期の業績予想は、前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は1~4割を見込んでいます。

その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高は5割弱でそこそこ利益面は5割強でそこそこです。

【2025年3月期2Qの状況、経営成績の要因】

昨年10月の連結子会社1社除外の影響はあるものの、新車の拡販の取り組みに加え中古車事業・整備事業も順調に推移したことから、

当中間連結会計期間の営業利益・経常利益としては過去2番目親会社株主に帰属する中間純利益は過去最高の実績となっています。

当中間連結会計期間における新車登録台数は、全国で前年比2.6%減、同社グループのマーケットである東京都内は同2.7%減となりました。

同社グループの登録台数は、電気自動車補助金の関係から電気自動車の登録が昨年度上半期に集中していたこともあり前年比11.0%減となりましたが、

充実した電動車のラインナップ(EV4車種、e-POWER車5車種など)を軸とした販売に加え、同社の強みである個人リースを推進し、受注台数と収益の確保に引き続き取り組みました。

なお、セグメントごとの経営成績は、2023年10月2日付でTCS株式会社(情報システム関連事業)の全株式を譲渡したことにより「自動車関連事業」の単一セグメントとなりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2025年3月期2Q末時点で66.7%と前期末(61.0%)から5.7ポイント増加しました。

負債及び純資産の、主な前期末比の増減は以下となっています。

  • 負債 (百万円)
    • 流動負債 △7,461
      (内訳)買掛金 △2,587未払法人税等 △2,814その他流動負債 △1,571
    • 固定負債 △470
      (内訳)長期借入金 △300リース債務 △125
  • 純資産(百万円)
    • 株主資本 +1,492
      (内訳)利益剰余金 +1,487

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2025年3月期2Qのキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※1)4,576百万円の支出
    • 営業活動によるCF 917百万円の収入(前年同期 6,016百万円の収入
    • 投資活動によるCF 5,493百万円の支出(同 3,626百万円の支出

 ※1 フリーCFの説明:

  • プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える
  • マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る

前期(2024年3月期2Q)のフリーCF(2,390百万円の収入)から6,966百万円減少しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円)

  • 税金等調整前中間純利益 3,852
  • 棚卸資産の増減額(△は増加) 3,394
  • 仕入債務の増減額(△は減少) △2,308

投資活動によるCFの主な内訳(百万円)

  • 有形固定資産の取得による支出 △6,059
  • 有形固定資産の売却による収入 611
  • その他 △46

【今期(2025年3月期)通期業績の見通し】

引き続き持続的成長のための人的資本の充実や顧客の利便性向上のための店舗投資等中期経営計画(2023年度~2026年度)の取り組みを着実に推進することで事業の成長を図るとともに、企業価値の向上に努めていく方針です。

以上により、連結業績は売上高1,500億円営業利益75億円経常利益70億円親会社株主に帰属する当期純利益45億円前期比 増収減益を見込んでいます。

なお、今2Q決算発表時には、2024年5月15日に公表された連結業績予想に変更はありません

株価指標と動向

株価指標

【2024/12/5(木)終値時点の数値】

  • 株価:423円
  • 時価総額:281億円
  • PER(株価収益率(予想)):6.24倍

PERは、同業で時価総額が近い、VTホールディングス(7593) 7.9倍、ICDAホールディングス(3184) 4.8倍、東葛ホールディングス(2754) 10.0倍と比較すると、中間的な水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):0.48
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):110倍
  • 年間配当金(1株当たり予想):24円(年2回 9月 12円、3月 12円)、利回り:5.67%(配当性向 35.4%)

配当利回り5.67%で、東証スタンダードの単純平均 2.55%(12/5時点)と比較すると、2倍以上の高い水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、年間1株当たり4~24円で推移しており、2022年3月期以降は連続増配を継続中です。

配当性向は、10%台~30%で推移しています。

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2020年3月期11.8
2021年3月期16.2
2022年3月期25.3
2023年3月期1530.5
2024年3月期24
(内 特別配当
2円)
21.7
表5:日産東京販売ホールディングス 年間配当金推移

この会社は、

株主への利益還元を行うことを経営の最重要課題のひとつと認識し、成長性を確保するための内部留保にも考慮しながら、

安定的な配当を行うことを基本方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、毎年3月末に500株以上保有の株主は、オリジナルクオカード 1,000円分(図1参照)(1,000株以上:2,000円分、5,000株以上:3,000円分)が進呈されます。

図1:日産東京販売ホールディングス 株主優待品
(出所:日産東京販売ホールディングスHP)

また、長期保有優遇制度があり、2年以上継続保有で5,000株以上保有の場合は、2,000円分が追加されます。

500株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)利回りは6.14%となります。

少しハードルが高いですが、個人投資家にとってはうれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2022年12月に安値(279円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、2024年3月に高値(631円)をつけました。

しかしその後は調整しており、直近では全ての移動平均線の下で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

9/26に高値(470円)をつけた後は、下落基調で推移して11/11に安値(409円)をつけました。

そしてその後は、420~440円のレンジ内で推移しており、

今回のPO発表の翌営業日(12/5)は、出来高は大きく増加しましたが、それほどPOによる短期的な需給悪化懸念は見られず前日比 1円安(-0.23%)と小幅な値動きでした。

今後は、直近の安値(409円)を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

  • 今期(2025年3月期)2Qの業績は、新車の拡販の取り組みに加え中古車事業・整備事業も順調に推移したことから、当中間連結会計期間の営業利益・経常利益としては過去2番目親会社株主に帰属する中間純利益は過去最高の実績となり、
    前年同期比 減収減益で、売上高は1割弱減、利益面は営業利益と経常利益は1割前後の減益だが、純利益は微増
  • 今期業績予想は、持続的成長のための人的資本の充実や顧客の利便性向上のための店舗投資等中期経営計画(2023年度~2026年度)の取り組みを着実に推進することで事業の成長を図るとともに、企業価値の向上に努め、
    前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は1~4割減を見込む。
  • その通期予想に対する進捗率は2Q終了時点で、売上高は5割弱でそこそこ利益面は5割強でそこそこ

【株主還元】

  • 配当利回り(予想)は5.67%(12/5時点)で、東証スタンダードの単純平均 2.55%と比較すると2倍超の高い水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株あたり4~24で推移しており、2022年3月期以降は連続増配を継続中
    配当性向は、10%台~30%で推移。
  • 今回のPOと同時に自社株買いを行うことも発表。
    この自社株買いにより、今回の株式の売出数量最大約1,390万株)に対し、そのうちの最大約5割を市場で買い入れて一時的な需給悪化の緩和を図っている。
  • 株主優待があり、毎年3月末に500株以上保有の株主は、保有株数に応じてオリジナルクオカード 1,000円分(図1参照)(1,000株以上:2,000円分、5,000株以上:3,000円分)が進呈される。
    500株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)利回りは6.14%となる。

【流動性・新株式の発行株数】

  • 今回の株式の売出数量(OA含む)は、発行済み株式総数の最大10.4%で、
    直近の株式の売出を含むPOの売出株数比率(OAを含む)(GENOVA、東テク、マックス)と比較すると中間的な数量
  • 直近の出来高5日平均は5,364百株、25日平均は1,862百株(12/5時点)で、流動性は高い水準

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2022年12月に安値(279円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、2024年3月に高値(631円)をつけた。
    しかしその後は調整しており、全ての移動平均線の下で推移している。
  • 直近の株価は、9/26に高値(470円)をつけた後は、下落基調で推移して11/11に安値(409円)をつけた。
    そしてその後は、420~440円のレンジ内で推移しており、今回のPO発表の翌営業日(12/5)は、出来高は大きく増加したが、それほどPOによる短期的な需給悪化懸念は見られず前日比 1円安(-0.23%)と小幅な値動き
  • 今後の株価は、直近の安値(409円)を割り込まずヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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