【公募増資・売出(PO)は買いか?】丹青社(9743)

サービス業

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムからサービス業種の丹青社です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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  • 公募増資・売出(PO)とは?
既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

まとめ

今回のPOは、大株主(りそな銀行、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行)からの株式の売出しです。売出価格等決定日や受渡期日、売出数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「売出価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、ゆうちょ銀行(6178) 2.08%、デンソー(3387) 3.02%となっており、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は三菱UFJモルガン・スタンレー証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、1/15(水)の夕刻に、会社側から売出価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

売出価格等決定日2025年1月15日(水)から 20日(月)までの間のいずれかの日
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
売出価格等決定日の5営業日後の日
株式の売出し
引受人の買取引受による売出し
数量
普通株式 3,036,900
発行済み株式総数 48,424,071  の約6.27%
②株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)
数量
普通株式 455,500 (上限の数量)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が売出す。
売出価格(決定後記載)
ディスカウント率(決定後記載)
申込単位数量100 株
主幹事三菱UFJモルガン・スタンレー証券
表1:丹青社(9743) PO概要

【株式売出しの目的】

  • 本邦企業においては、コーポレートガバナンス・コードの取り組みなどから、政策保有株式を見直す動きが進んでいる。
  • 今般、取引金融機関より、同社株式を売却したい旨の意向を確認したことから、当該金融機関が保有する同社株式の円滑な売却を実現するため、上記株式売出しを実施する。
  • 今回の株式売出しにより、浮動株比率を高め株主層を拡大することを通じて、中長期的な企業価値の向上を目指す。

としています。

また、今回の株式の売出数量は、発行済み株式総数の最大約7.21%(OAを含む)で、

直近の株式の売出のみのPOの売出株数比率(OAを含む)は、大成温調 5.01%、寿スピリッツ 1.9%、日産東京販売HD 10.4%でしたので、それらと比較すると中間的な数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株数)の5日平均は7,090百株、25日平均は5,158百株(1/8時点)で、流動性は高い水準です。(1日 1,000百株を平均的な水準としています。)

どんな会社?

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決を行っています。

調査・企画から、デザイン・設計、制作・施工、デジタル技術を活かした空間演出や運営まで、空間づくりのプロセスを一貫してサポートしています。

事業内容は、商業その他施設事業」「チェーンストア事業」「文化施設事業」の各報告セグメントにおける、調査、研究、企画、設計、施工、監理及び、その他これらに関連する事業活動を展開しており、各セグメントは、

  • 商業その他施設事業
    同社及び㈱丹青TDC並びに㈱丹青ディスプレイにおける、チェーンストア事業以外の百貨店・専門店・飲食店等の商業施設全般、オフィス、ホテル、その他の施設の内装等及び博覧会、展示会等の展示に関する事業
  • チェーンストア事業
    同社及び㈱丹青TDCにおけるファストファッションやファストフード等のチェーン展開型店舗施設の内装等に関する事業
  • 文化施設事業
    同社及び㈱丹青研究所における博物館、科学館の展示等の文化施設全般に関する事業

を行っています。

2024年1月期通期のセグメント別売上高構成比は、

  • 商業その他施設事業 57.7%
  • チェーンストア事業 28.7%
  • 文化施設事業 13.1%
  • その他(事務機器等のレンタル・販売、労働者の派遣、Webサイトを活用した情報サービス等) 0.5%

となっており、「商業その他施設事業」が6割弱を占めています。

直近の経営概況

経営状況

【2025年1月期3Q(2024年2月~10月)の経営成績】

(2024年12月13日発表:日本基準(連結))

決算期売上高
[億円]
(前年
同期比
増減率
[%])
営業
利益
[百万円]
(同)
経常
利益
[百万円]
(同)
親会社株主
に帰属する
当期純利益

[百万円]
(同)
2024年1月期
3Q累計
582
(24.5)
1,948
(484)
2,013
(316)
1,350
(431)
2025年1月期
3Q累計
642
(10.2)
3,572
(83.4)
3,717
(84.5)
2,562
(89.7)
2025年1月期
通期会社予想
(2024年12月13日
修正)
920
(13.3)
5,000
(28.8)
5,100
(27.7)
3,600
(29.9)
通期予想に対する
3Qの進捗率[%]
69.771.472.871.1
表2:丹青社 2025年1月期3Q経営成績と通期会社予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は1割増利益面は8~9割増でした。

今期(2025年1月期)通期の業績予想は、今3Q決算発表と同時に上方修正(表4参照)しており、前期比 増収増益で、売上高は1割強増利益面は3割弱増を見込んでいます。

その通期予想に対する進捗率は3Q終了時点で、売上高、利益面ともに前後でそこそこです。

【2025年1月期3Qの状況、経営成績の要因】

ディスプレイ業界の事業環境は、個人消費の一部に足踏みが残るものの、このところ持ち直しがみられ、販促投資が持ち直していること等により、需要は回復してきています。

しかしながら、物価上昇や人件費の増加等によるコスト上昇リスクについても、注視していく必要があるとの認識です。

このような状況のもと、同社の今3Qの業績サマリーは以下です。

  • 市場環境が回復したこと等により需要は回復し、売上⾼および各利益については前年同期を上回った
  • 全ての事業セグメントにおいて受注⾼が増加し、受注残⾼は⼤幅に前年同期を上回った
  • 2025年⼤阪・関⻄万博に関する案件は、主に商業その他施設事業へ計上している。

P/Lの概況としては、以下となっています。

  • 良好な市場環境のもと、収益性重視の受注活動を⾏ったことなどにより、売上総利益率は改善し18.4%となった。
  • 販管費については、増収に伴う営業経費の増加等により、前年同期⽐で約5億円の増加となった。

その結果、増収および売上総利益率の回復に伴い、営業利益および親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期を上回っています。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

主力の「商業施設その他施設」「チェーンストア」「その他」前年同期比 増収増益

「文化施設」増収黒字転換でした。

セグメント売上高
[億円]
(前年同期比
増減率
[%])
セグメント
利益
[百万円]
(同
商業
その他施設
367
(9.1)
2,074
(72.1)
チェーン
ストア
195
(13.2)
1,338
(80.9)
文化施設74.9
(7.8)
52
(黒字転換)
その他3.2
(8.0)
104
(11.9)
表3:2025年1月期3Q セグメント別業績

セグメント別の状況は以下です。

商業その他施設事業

前年同期に⽐べ需要は回復し、主にホテル、ショールーム、企業ミュージアム、⼤阪・関⻄万博等の新改装案件が増加したこと等から、

売上⾼、セグメント利益ともに前年同期を上回りました。

チェーンストア事業

前年同期に⽐べ需要は回復し、主に飲⾷店分野や⾐料専⾨店分野の新改装案件が増加したこと等により、

売上⾼、セグメント利益ともに前年同期を上回りました。

文化施設事業

前年同期に⽐べ需要は回復し、収益性の低い案件が減少傾向にあることから売上⾼、セグメント利益ともに前年同期を上回りました。

その他

ディスプレイ業以外の事務サービス等についても前年同期に⽐べ需要は回復し、売上⾼、セグメント利益ともに前年同期を上回りました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2025年1月期3Q末時点で63.0%と前期末(62.4%)から0.6ポイント増加しています。

負債及び純資産の、主な前期末比の増減は以下となっています。

  • 負債 (百万円)
    • 流動負債 △952
      (内訳)未成工事受入金 +1,615支払手形・工事未払金等 △1,542賞与引当金 △640
    • 固定負債 +692
      (内訳)長期借入金 +766
  • 純資産(百万円)
    • 株主資本 +430
      (内訳)利益剰余金 +1,118自己株式(自己株式数は増加)△688
    • その他の包括利益累計額 △173
      (内訳)その他有価証券評価差額金 △242

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2025年1月期3Q累計のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

  • フリーCF(営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計した金額 ※1)737百万円の支出
    • 営業活動によるCF 1,303百万円の支出(前年同期 135百万円の収入
    • 投資活動によるCF 566百万円の収入(同 463百万円の支出

 ※1 フリーCFの説明:

  • プラスの場合:会社が自由に使える資金が増える
  • マイナスの場合:会社が自由に使える資金が減る

前期(2024年1月期3Q累計)のフリーCF(328百万円の支出)から409百万円減少しています。

営業活動によるCFの主な内訳(百万円):

  • 税金等調整前当期純利益 3,854
  • ⽀払⼿形・⼯事未払⾦等(△は減少) △1,544
  • 未払消費税(△は減少) △1,479

投資活動によるCFの主な内訳(百万円):(データなし)

【今期(2025年1月期)通期業績予想の修正】

今3Q決算発表と同時に、2025年1月期通期の業績予想上方修正をしています。

2025年1月期通期の業績予想は表4です。

売上高
[億円]
営業
利益
[百万円]
経常
利益
[百万円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益

[百万円]
1株当たり
当期純利益

[円]
1株当たり
年間配当金
[円]
前回(2024/3/15)
発表予想
8304,0004,1002,80058.5230
今回修正予想9205,0005,1003,60076.5140
増減額901,0001,00080010
増減率[%]10.825.024.428.633.3
表4:丹青社 2025年1月期通期業績予想数値の修正(2024年12月13日発表)

前回予想と比べ、売上高は1割利益面は2~3割の増額修正をしています。

修正の理由は、

  • 売上高については、良好な市場環境を背景に需要が堅調に推移したことから、主に商業その他施設事業およびチェーンストア事業において前回予想を上回る見通し
  • 利益面についても増収に伴い前回予想を上回る見通し

としています。

また、同社は、長期的な観点に立ち資本の充実を勘案しながら、収益の状況に応じた配当を行うことを基本としており、

今回の上方修正を踏まえ、配当予想当初予想から年間1株当たり10円増配40円としています。

株価指標と動向

株価指標

【2025/1/8(水)終値時点の数値】

  • 株価:920円
  • 時価総額:445億円
  • PER(株価収益率(予想)):11.0倍

PERは、同業で時価総額が近い、乃村工藝社(9716) 18.5倍、スペース(9622) 11.2倍と比較すると、低い水準です。

  • PBR(株価純資産倍率):1.36倍
  • 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):2.62倍
  • 年間配当金(1株当たり予想):40円(年2回 7月 15円、1月 25円)、利回り:4.34%(配当性向 52.2%)

配当利回り4.34%で、東証プライムの単純平均 2.46%(1/7時点)と比較すると高い水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、年間1株当たり26~42円で推移してpり、

配当性向は、50%~300%幅があります

決算期1株当たり
年間配当金
[円]
配当性向
[%]
2020年1月期4249.1
2021年1月期4055.4
2022年1月期2686.3
2023年1月期30309
2024年1月期3051.7
表5:丹青社 年間配当金推移

この会社は、

利益配分の方針は、長期的な観点に立ち資本の充実を勘案しながら、収益の状況に応じた配当を行うことを基本とし、この方針に基づき配当性向等を考慮し利益の配分を行っています。

また、内部留保資金は、今後予想される競争の激化や経営環境の変化に耐え得る企業体質の強化をはかり、

新たな成長分野への事業展開を推進するための研究、開発、設備投資及び財務体質の改善その他の資金需要を賄う原資として活用するとしています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

2023年1月に安値(695円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、翌年7月に高値(1,068円)をつけました。

その後は、一旦は下落基調で推移しましたが、直近では上昇に転じてきています

<日足チャート(直近3か月間)>

しばらくヨコヨコの推移でしたが、今3Qの決算と上方修正、増配を発表した翌営業日(12/16)に、これらを好感され窓を開けて急騰しました。

そして、今回のPO発表の翌営業日(1/8)は、POによる短期的な需給悪化懸念により、窓を開けて出来高を伴い、前日比 59円安(-6.03%)と急落しています。

今後は、25日移動平均線(赤線)や75日移動平均線(青線)の上をキープし、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか、要注目です。

まとめ

【業績】

  • 今期(2025年1月期)3Qの業績は、主力の商業その他施設事業チェーンストア事業の需要が回復し、新改装案件が増加したことから、
    前年同期比 増収増益で、売上高は1割増利益面は8~9割増
  • 今期業績予想は、良好な市場環境を背景に需要が堅調に推移したことから、主に商業その他施設事業およびチェーンストア事業において前回予想を上回る見通しとして、今3Q決算発表と同時に上方修正しており、
    前期比 増収増益で、売上高は1割強増利益面は3割弱増
  • その通期予想に対する進捗率は3Q終了時点で、売上高、利益面ともに7割前後でそこそこ

【株主還元】

  • 配当利回り(予想)は4.34%(1/8時点)で、東証プライムの単純平均 2.46%(1/7時点)と比較すると高い水準
  • 直近5年間の配当金は、年間1株あたり26~42で推移しており、
    配当性向は、50%~300%幅がある
  • 会社の株主還元方針は、収益の状況に応じた配当を行うことを基本とし、この方針に基づき配当性向等を考慮し利益の配分を行っている。

【流動性・新株式の発行株数】

  • 今回の株式の売出数量(OA含む)は、発行済み株式総数の最大7.21%で、
    直近の株式の売出を含むPOの売出株数比率(OAを含む)(大成温調、寿スピリッツ、日産東京販売HD)と比較すると中間的な数量
  • 直近の出来高5日平均は7,090百株、25日平均は5,158百株(1/8時点)で、流動性は高い水準

【株価モメンタム】

  • 週足ベースの株価は、2023年1月に安値(695円)をつけた後は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、翌年7月に高値(1,068円)をつけた。
    その後は、一旦は下落基調で推移したが、直近では上昇に転じてきている
  • 直近の株価は、しばらくヨコヨコの推移だったが、今3Qの決算と上方修正、増配を発表した翌営業日(12/16)に、これらを好感され、窓を開けて急騰した。
    そして、今回のPO発表の翌営業日(1/8)は、POによる短期的な需給悪化懸念により、窓を開けて出来高を伴い、前日比 59円安(-6.03%)と急落した。
  • 今後の株価は、25日移動平均線や75日移動平均線の上をキープし、ヨコヨコから上昇に転じていくのか、割り込んで下値模索をするのか要注目。

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐
(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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