空き家バンクとは、空き家の増加が社会問題化する中、住宅ストックの有効利用を目指し自治体が立ち上げたもので、「空き家バンク制度」ともいわれます。
簡単にいうと「空き家の所有者と居住希望者のマッチングシステム」で、運営は各自治体が行っています。
この記事では、空き家バンク制度の仕組みから実際に利用するときのメリット・デメリットや注意点をまとめています。
空き家の活用方法をお探しの方は以下の記事もご覧ください。
1、空き家バンクとは
空き家バンクとは、各自治体ホームページなどで空き家の物件情報を提供するシステムのことです。
自治体が空き家の情報収集及び情報発信を行うことで、その有効活用を図り、移住・定住を促進し地域を活性化することを目的とする制度です。
(1)空き家バンク制度の仕組み
空き家バンクを運営するのは市町村などの自治体です。
空き家を所有する人が空き家バンクに登録すると、空き家の物件情報が自治体のホームページなどに掲載されます。「買いたい」「借りたい」など居住を希望する人は、空き家バンクのページから物件を探すことができるのです。
「空き地バンク」を設置している自治体もありますが、仕組みは同じです。
①全国版空き家・空き地バンク
全国で設置が進む空き家バンクですが、自治体ごとに物件情報の項目が異なったり、物件を検索しにくいなどの課題がありました。
そこで国土交通省が設置したのが、全国の空き家バンク情報をまとめて見ることができる「全国版空き家・空き地バンク」のサイトです。
国土交通省が運営を委託している公式サイトは以下の2つです。
- 株式会社LIFULL|LIFULL HOME’S 空き家バンク
- アットホーム株式会社|at home 空き家バンク
②自治体の空き家バンク
「全国版空き家・空き地バンク」はいわばポータルサイトです。
空き家を「売りたい」「貸したい」という所有者は、まず自治体の空き家バンクや、空き家対策の窓口に問い合わせる必要があります。
空き家バンクに掲載する流れとしては、以下のとおりです。
- 所有者が自治体の空き家バンクに登録する
- その自治体が「全国版空き家・空き地バンク」に参加していれば、全国版にも掲載される
全自治体の7割以上が空き家バンクを設置していますが、「全国版空き家・空き地バンク」にすべてが掲載されている訳ではありません。
空き家を「買いたい」「借りたい」という具体的なエリアがある場合、まずは自治体のホームページ内で空き家バンクを検索してみましょう。
(2)空き家バンクのメリット
空き家バンクは、住宅ストックを活用し地域を活性化することを目的とする制度です。
民間企業である不動産仲介業者のように利益を追求する必要はないため、利用者にとっては金銭面でのメリットがあります。
①無料で情報発信できる
一般的に、不動産を売却したいという場合は不動産仲介業者と媒介契約を交わし、物件ポータルサイトへ掲載するための広告料や手数料が発生します。
しかし、空き家バンクは無料で利用することができます。
自治体が運営するサイトを通して、無料で情報発信し、買い手や借り手を募集できるのです。
②激安物件が見つかることもある
「買いたい」「借りたい」不動産を探す際は、まずはSUUMOなど物件情報ポータルサイトを見るのではないでしょうか。
このようなポータルサイトは無料で掲載できる訳ではないので、仲介業者がある程度の利益を見込んだ物件が掲載されていることになります。
しかし、空き家バンクは掲載するのに費用がかからないため、ポータルサイトには掲載されないような激安物件を見つけることも可能です。
③自治体の助成金を利用できる場合がある
空き家バンクは移住・定住を促進し地域を活性化するための制度です。
空き家バンクから物件を購入しリフォームして住むというような場合、移住者向けのリフォーム費用といった助成金制度を利用できる自治体もあります。
気に入る物件が見つかった場合は、自治体の助成金制度についても調べるようにしましょう。
(3)空き家バンクのデメリット
一般の不動産取引とは異なる以下の点がデメリットといえるでしょう。
①情報発信が限定的
空き家バンクに掲載されている情報は限定的です。運営する自治体により多少異なりますが、価格と所在地のみなど最低限の場合もあります。
SUUMOなど民間の物件情報ポータルサイトのような詳細情報は掲載されていないため、詳しい情報は問い合わせする必要があります。
②仲介業者を選ぶことができない
空き家バンクは「空き家の所有者と居住希望者のマッチングシステム」です。そのため、マッチング後の条件交渉や契約手続きに空き家バンクを運営する自治体が関わることはありません。
条件交渉や契約手続きは、自治体が協定を結んでいる仲介業者が行い、利用者は仲介業者に媒介手数料を支払います。利用者が業者を選ぶことはできませんので注意が必要です。
3、空き家バンクを利用する流れ
次に、空き家バンクを利用する流れについてみていきましょう。
以下の2つのケースに分けて、それぞれの利用の流れについて紹介します。
- 売りたい/貸したいとき
- 買いたい/借りたいとき
(1)売りたい/貸したいとき
空き家の所有者が空き家バンクを利用する流れは以下の通りです。
まずは、物件所在地の自治体にある「空き家窓口」に登録申し込み申請をします。
申し込みが受理されたあと、担当者が現地調査しますので立ち会いが必要です。
調査の結果、空き家バンクに登録できる物件であればここで登録が完了します。
空き家バンクでの物件情報発信が始まり、居住希望者からの問い合わせを待ちましょう。
居住希望者との様々な交渉は、自治体が協定を結ぶ宅建業者(主に地元の仲介業者)が間に入って行います。
当事者間での直接交渉はトラブルになる可能性があるため、不動産取引の専門家が必要です。引き渡しまでの条件や仲介手数料などについて、しっかり確認しましょう。
(2)買いたい/借りたいとき
空き家バンクで物件を探している場合、入居までの流れは以下の通りです。
まずは、希望エリアの自治体が運営する空き家バンクを閲覧します。
自治体ホームページや「全国版空き家・空き地バンク」にその地域の空き家情報が見当たらなかった場合、残念ながら空き家バンク制度に対応していないエリアということになります。
希望する物件が見つかったら、問い合わせてみましょう。現地に赴き物件の状況や周辺環境を確認し、問題なければ利用を申し込み、条件の交渉に入ります。
空き家所有者との様々な交渉は、自治体が協定を結ぶ宅建業者(主に地元の仲介業者)が間に入って行います。
当事者間での直接交渉はトラブルになる可能性があるため、不動産取引の専門家が必要です。いろいろな条件や、仲介手数料などについてしっかり確認しましょう。
物件を購入する場合は、購入資金についての準備も必要です。
住宅ローンを利用する場合、金融機関に様々な物件資料を提出します。必要な資料については、契約前に売主や仲介業者にしっかり確認しましょう。
4、空き家バンクを利用するときの注意点
実際に空き家バンクを利用する場合には、以下の2つの点に注意しましょう。
- 物件を引き渡す準備は自分でしなければならない
- 売却価格を高く設定しすぎると買い手が見つからない
また、「空き家バンク」と「不動産会社」のどちらを利用するべきか悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
どのような場合に空き家バンクを利用できるのかについても、あわせて紹介します。
(1)物件を引き渡す準備は自分でしなければならない
空き家バンクに登録できる物件は、原則「現状のまま住める物件」です。
建物の主要構造部分が崩れていたり、増築を繰り返すなどで安全性に問題がある場合は登録できないとお考えください。
また、土地については隣地との境界が確定しているなどトラブル要素がないことが求められます。
これらについて「すべて問題ない」とわかる書類を準備するのは空き家の所有者です。
さらに、空き家内に残されている大型家具などを処分しなければなりません。
「大型家具を建物に設置したまま引き渡したい」などの条件交渉は可能ですが、すべて撤去しなければならないこともあるでしょう。
(2)売却価格を高く設定しすぎると買い手が見つからない
空き家バンクは物件情報を掲載していますが、サイトの担当者が物件を売り込んでくれるということはありません。そのため、高すぎる価格ではいつまでも買い手が見つからないこともあります。
空き家バンクに登録できるような状態が良い物件で、昔ながらのしっかりした作りの家屋であったり、思い入れがある家であったりする場合、安い値段で売ることに抵抗を感じるかもしれません。
しかし、空き家バンクで物件を探す人は希望するエリアの掘り出し物を探しています。
高すぎる価格では問い合わせが少なく、売却に時間がかかるでしょう。
(3)空き家バンクと不動産会社どちらを利用するべき?
空き家バンクに登録できる物件は、以下のように限られています。
- 建物:現状のまま居住することができ、法令に適合していること
- 土地:隣地との境界や権利関係が明確になっていること
これらの条件をクリアしている物件であれば、まずは一般的な不動産会社での売却を検討してみるべきでしょう。
どこの不動産会社に問い合わせればいいのかわからない……という場合は、一括査定サイトを利用することをおすすめします。
SUUMOは、大手不動産会社から地元密着型の仲介業者まで、10社まで(※)不動産の価格査定を依頼することができるサイトです。
※査定可能会社数は物件所在地によって異なります
SUUMO
複数社の査定結果を見ることで売却価格の相場を知ることができ、空き家バンクに登録する際の参考にもなるでしょう。
まずは不動産会社に問い合わせし、価格などの条件が折り合わなかったような場合に、空き家バンクを活用するのが良いでしょう。
5、空き家バンクは不動産投資に利用できる?
空き家バンクで物件を購入・リフォームして貸し出し、賃料収入を得るという不動産投資は問題ないのでしょうか。
空き家バンク制度の趣旨は「移住・定住促進による地域活性化」であるため、自己居住用であることが原則です。
他にも、定期的に滞在するセカンドハウスとしての利用は問題ありません。
しかし、転売・転貸については禁止を明示している自治体もあります。
不動産投資として購入を考えている場合は、空き家バンク利用申し込み時に必ず申告しましょう。
(1)東京や首都圏の空き家バンク
「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家は840万件以上。人口減少に伴い東京や首都圏でも空き家は増えています。
しかし、空き家バンクに登録できるのは
- 現状のまま利用できる
- 違法建築ではない
などの条件を満たす物件に限られるため、件数は多くありません。
「全国版空き家・空き地バンク」(LIFULL HOME’S 空き家バンク)(at home 空き家バンク)からも確認できますが、自治体ホームページでもまとめられています。
- 東京都|東京都 空き家情報サイト
- 埼玉県|市町村空き家バンク
(2)土地を活用する方法を調べてみよう
空き家・空き地は持っているだけでは維持管理や税金などのお金がかかるマイナス資産です。
例えば、最寄駅からの所要時間が1時間以上かかる、バス路線もない……という立地の空き家がある場合、引き続き居住用物件として売却・利用することは適しているのでしょうか。
また、空き家バンクに登録できない物件はどうすればいいのでしょうか。
そのような場合は、土地を活用する方法を調べてみましょう。
土地の特徴に合わせた最適な活用プランがわかるサイトをご紹介します。
空き家バンクについてのQ&A
空き家バンクのメリットは?
空き家バンクは、住宅ストックを活用し地域を活性化することを目的とする制度です。利用者にとっては金銭面でのメリットがあります。
- 無料で情報発信できる:空き家バンクの利用は無料。不動産を売却したいときの広告料や手数料がかからない。
- 激安物件が見つかることもある:「買いたい」「借りたい」ときは、物件ポータルサイトに掲載されないような激安物件を見つけることもできる。
- 自治体の助成金を利用できる場合がある:空き家バンクは移住・定住を促進する制度。運営する自治体によっては居住者に助成金の制度があるところもある。
空き家バンクのデメリットやリスクは?
空き家バンクは「空き家の所有者と居住希望者のマッチングシステム」です。
そのため、マッチング後の条件交渉や契約手続きに空き家バンクを運営する自治体が関わることはありません。条件交渉や契約手続きは、自治体が協定を結んでいる仲介業者が行い、利用者は仲介業者に媒介手数料を支払います。利用者が業者を選ぶことはできませんので注意が必要です。
空き家バンクに登録できるのはどんな物件?
空き家バンクに登録できる物件は、原則「現状のまま住める物件」です。建物の主要構造部分が崩れていたり、安全性に問題がある場合は登録できないとお考えください。
土地については隣地との境界が確定しているなどトラブル要素がないことが求められます。
これらが「すべて問題ない」とわかる書類を準備するのは空き家の所有者です。
さらに、空き家内に残されている大型家具などを処分しなければなりません。「現状のままで引き渡したい」などの条件交渉は可能ですが、すべて撤去しなければならないこともあるでしょう。
空き家バンクは誰でも使えるか?
空き家バンクを利用できるのは、
- 「売りたい」ときは所有者
- 「買いたい」「借りたい」ときは実際に居住する本人
転売・転貸を目的とする利用は原則禁止されています。
まとめ
活用せず持っているだけでは、マイナス資産になってしまう空き家。
何とかしたいと思ったら、まずは一括査定サイトや土地活用サイトの利用がおすすめです。
「一般的な不動産取引では価格などの条件が合わなかった」
「思い入れのある家なので気長に居住希望者を探したい」
とお考えであれば、空き家バンク制度を活用してください。